支城ネットワーク
戦国大名は領国を守るため、本拠地(本城)を中心として多くの支城を構え、戦時は連携して防衛していたという。
※城郭用語ではこの支城網のことを支城ネットワークもという。
戦国時代の城郭では、常時、不寝番という警備員が配備され、有事に備えて兵糧も備えられるなど、万全の体制がとられていた。
支城の種類
(イメージ)
境目の城
国境を固める城のこと。出陣時は前線基地として機能する。根城
地域の拠点。大名の一族や重臣が配備される。伝えの城
高所に築かれ、敵の侵入を察知し狼煙などで他の支城に伝達する。連絡網の中心となる城。狼煙台
伝えの城から知らせを受けると、数km間隔に設置された各地の狼煙台から、狼煙によって徐々に本城へ伝えていく。繋ぎの城
本城と支城を繋ぐ中継地点の城。援軍が駐留できるように広大な敷地が用意された。本城(大根城)
大名の本拠地のこと。兵力召集
敵軍の侵入の報が入ると、領内で兵力の召集を行う。これを「陣触」という。
城下に住む武士や兵は、城から流れる太鼓や鐘の合図によって召集され、遠方にいる者は使者から口頭か文書で呼びかけられる。
命を受けた領民は、直ちに具足を纏って駆けつけた。
また、長宗我部などの一部の大名は、槍、刀、具足を予め田の畦に用意させ、陣触の際、その場で支度・参陣させられる「一領具足」とよばれる制度を導入していた。(“一領”とは具足一式のこと。)
一連の流れ
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- 01敵軍の侵攻
- 境目の城が敵軍による攻撃を受ける
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- 02報告
- 伝えの城が狼煙を上げて他の支城へ伝える。悪天候の場合は法螺貝や鐘によって伝達する。
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- 03狼煙網
- 各所の狼煙台が連携して根城・本城へ伝達。
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- 04援軍の派遣
- 本城・根城などにて兵力を召集する。
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- 05援軍の急行
- 根城などの有力な城から、繋ぎの城を経由して援軍が境目の城へと急行する。
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- 06後詰め決戦
- 援軍が境目の城へ物資を搬入したりする。また、境目の城を攻撃している敵軍との決戦に挑む。(後詰め決戦)
実例
北条氏
特に北条氏の支城ネットワークは有名で、小田原城を中心に韮山城、八王子城、山中城など、交通&軍事の要衝地域に多くの支城を構え、多方面からの攻撃にも迅速に対応できるように設計されていた。各支城は当主の直轄ではなく、それぞれ北条氏の一族や重臣が配備され、独自で城の統治を行っていた。武田氏
武田氏は領国の各地に約5km間隔で狼煙台を設け、敵の侵攻があれば国境の狼煙台から狼煙が上がり、狼煙をリレーして地域の拠点(根城)を中継して本拠(本城)まで迅速に事態を伝達できる体制をとっていた。約160kmを2時間程度で連絡できたともされている。織田氏
織田信長は琵琶湖周辺に坂本城、膳所城、など、重臣が配備された支城を構えていた。これは琵琶湖を使った水上輸送や伝達を目的とし、本拠地安土城と連携していた。真田氏
戦上手で知られる真田昌幸は、第一次上田合戦で徳川軍によって本城である上田城が攻められたとき、約4km離れた支城、砥石城から長男信幸を出撃させ、徳川軍の背後を急襲し上田城を守り切ったという。城用語データベース